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◆ロロとナナリー


兄様、買い物に付き合って欲しいんです。
唐突なナナリーの申し出に、ロロは顔をしかめた。
ナナリーの病院の帰り道は、寄り道をするなと固く兄に言われている、けれど。
「ルルーシュ兄様へのプレゼントの事で」
その一言に、その兄の注意など吹っ飛んでしまった。
「プレゼント?」
誕生日のお祝いは、俺のものなんか買わなくていい、無駄遣いするなという兄の主張に二人して負け、ささやかな手料理を贈ったのは記憶に新しい。
「でもやっぱり、形に残るものを贈りたくて」
そこの角の店です。示されたのは、真新しい手芸店だった。
「ナナリー、兄さんへのプレゼントって、編み物?」
ちらりとのぞいた店の中は、色とりどりの毛糸であふれている。ナナリーははい、と笑って。
「シャーリーさんたちに習って、ようやく簡単なものなら作れるようになったんです」
「……ふうん」
「それで、ロロ兄様に見立ててもらおうと思って」
え、と口を開けたままのロロに、ナナリーはにこにこと笑って続ける。
「私、兄様に似合う色が決めきれないんです。だから」
「僕に?」
「はい!一緒に選んでください」
それにこれなら『抜け駆け』じゃないですよね、ロロ兄様?
「一緒に選んだから、一緒に贈ろうって?」
「勿論兄様にもお教えしますから、手袋の指の一本ぐらいは編んでください」
笑いつつ押しの強い妹に、反論はできそうになかった。
『どちらかが作った』と言うより、『二人で協力した』というほうが、あの兄さんはきっと喜ぶだろうから。
「わかったよ」
頷くと、ナナリーは安心したように息をついた




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