☆のんきなパラレルでギャグです。みんな仲良しだといいなと言う世界。

[毎日の日々]



スザクとナナリーがいろいろあって結婚したのは3ヶ月前。
郊外のさらに果てのだだっ広い庭?付のたぶん質素な家(むこうの山が二つほど含まれるらしい。父帝からのプレゼントだそうだ)を新居にして、新しい生活が始まった。
家族は二人の他に、たぶんナナリーと並んで家庭内の一番の実力者(猫?)のアーサー、そしてルルーシュと、気がついたら居たC.C.。咲世子さんは週何度か手伝いに来てくれる事になっているそうだ。
最初ルルーシュも同居と聞いて、周りの友人たちは流石に新婚家庭を邪魔するなと非難していたが、ナナリーの「皆さん一緒だと楽しいですね」のひと言で止んだらしい。
一方スザクの方もあまり深く考えていないのか、「3人一緒なんて、昔うちに居た頃を思い出すね〜今度はC.C.も一緒かあ」と暢気なものだった。

そして始まった新生活。昔のようだと言ってもそこは新婚家庭だ。甘い甘い砂糖菓子のような。
…正直ルルーシュは参りかけていた。
2人が仲が良いのはもちろん嬉しい。が、結婚して増えたスキンシップを目にするのが、…辛い。
結婚前だったら止めた。ナナリーに対して不埒な事は許さんと全力で止めていた。というか流石に長い付き合いのせいか、天然と称されるスザクでも、ルルーシュの前ではそういう気配をあまり見せないでいた。なんとなく、いや確実にややこしくなるのがわかっていたのだろう。
しかし流石に結婚後は夫婦だしここは自分達の家なのだからとそうではなくなった。とはいえ手を繋いでいたとか朝の見送りのキス程度であるったのだが。
しかしルルーシュにとっては挨拶であっても心臓に悪い。
「…せめて俺のいないところでやってくれれば……」
夜、寝付けずブランデー入りの紅茶を飲みながらブツブツぼやくと、寝転びながら、料理練習中のナナリーお手製のピザを頬張りながらC.C.は返す。
「アホか。居候の分際で…じゃあなんだ、お前はスザクとナナリーが幸せなのが嫌なのか」
「なっ、そんなことあるわけ無いだろう!」
思わず立ち上がったルルーシュにC.C.は覚めた目線を送る。
「俺はナナリーの幸せを第一に考えている!それ以上もそれ以下もない」
「…本当か?じゃあナナリーに子供ができても祝福できるな?今のお前だとそうは見えないぞ」
「こど……!」
C.C.の言葉に想像したルルーシュは言葉に詰まった。
「…夫婦でもやっていいことと悪いことが…」
「いいんだよ、馬鹿。」
最後の一口を飲み込んで、C.C.は起き上がった。目の前のルルーシュはまだ立ち上がったままだ。
「紅茶も飲み終わったんだろう。これ以上考えても答えはでまい。お前もう寝た方がいいぞ」
「…そうだな」
ルルーシュはひとつため息をつくと、カップとソーサーを持ち、片付けるためにキッチンへと向かった。

ルルーシュの部屋とスザクとナナリーの部屋はリビングとキッチンを挟んで反対側にある。
暗がりのなか、明かりも付けずにキッチンへ入ると、向こうの部屋の扉から光が漏れているのに気付いた。
ーまだ二人とも起きてるのか…?
様子を見たい衝動にかられたが、そんなわけにはと頭を振る。いままで妹の部屋を伺っていたのとは違うのだ。
ルルーシュが一人葛藤しているその耳に、小さく声が漏れ聞こえてきた。
なんと言っているかははっきりとは聞こえない。だが……
「……あ……クさん…そ……くすぐった……」
紛れもなくナナリーの、聞いたことの無い艶のこもった声(ルルーシュにはそう聞こえた)に頭が真っ白になる。

がっしゃーん!
鋭い、陶器の割れた音が家中に響き渡った。
ルルーシュの目の前の扉がバタンと大きな音をたてて開いた。中からは驚いた顔のスザクが現れる。
「!?ルルーシュ…?今の音は…」
スザクが視線を床に落とすと、割れたティーカップとソーサーが目に入った。
「なんだ、君がカップ落としたのか…どうしたの、珍しいね」
「…スザクッ…お前、今何をっ!」
文字通りTシャツの襟を掴んで荒々しく言う。
「お兄さま?今の音は…どうしたんですか?」
「どうした、騒々しい」
杖をたよりにナナリーも顔を出した。薄い水色のキャミソールワンピースがよく似合っている。そしてルルーシュの背後からは大きめのシャツを1枚着ただけの、面倒くさそうな顔をしたC.C.も現れた。
「あ、ナナリー、C.C.あんまり近寄らない方が良いよ。カップが割れちゃって危ないから」
スザクはすっとルルーシュの手を襟から外すしながら言う。
「ほらルルーシュ、落としたの君なんだから、早くホウキ持ってきて。」
「掃除機ならあちらに有りますよ?」
「うん。でも分別しなきゃいけないからね。あ、ガムテープ…」
スザクに急かされるままにルルーシュは割れたカップの片付けをした。しかし心の中はまださっきの漏れ聞こえていた声に対してのショックがぐるぐると渦巻いていた。
「まったく何をしてるんだお前は。」
「……ああ、すまん…」
片付けている頭に、心底あきれたC.C.の声が降ってくる。だんだん冷静さを取り戻したルルーシュは、反面失態に落ち込んできていた。

ー俺は一人で何をしているんだ。ナナリーとスザクは夫婦なんだから何があっても…問題は…

ルルーシュの背中にどんよりと黒い雲が見えそうになったころ、床にペタペタとガムテープで破片を取っていたスザクが顔を上げた。
「そう、ルルーシュ、さっき聞かれた事だけど。マッサージだよ、ナナリーの足の。君もやってたんだろ?なら僕もできないといけないと思ったんけど。」
「は?…まっ…さーじ?」
「そう、マッサージ。それがどうかしたかい?」
至極当然という顔で語るスザクに、ルルーシュは力の無い、ひきつった笑いを返すしかなかった。
「…そうかマッサージ…な…ははは…」
そんな二人の様子をナナリーは不思議そうに眺め、C.C.はひとつため息をついた。
「どうしたんでしょうか…」
「ナナリー、お前は気にしなくていいと思うぞ」
「そうなんですか?」
「ああ。」
これから先どうなることかとC.C.はもうひとつため息をついた。時間がたてば慣れるのだろうが、一体どれだけかかるのやら、と。


一通り片付け終わると、遅いから休もうという話になり、各々の部屋に戻った。
ガックリと頭を垂れて、ルルーシュは力無くつぶやく。
「……俺は…邪魔なのかもしれんな…」
「何をいま〜〜〜いや、別にあまり気にしなくていいんじゃないのか。」
問いかけたルルーシュに対して、C.C.の方はあっけらかんと答える。先ほどまでの呆れた様子とはさっぱり変わっていた。
「…そう、か…?」
確認するようなルルーシュの問いにC.C.は頷く。そしてC.C.は先ほどのことを思い出すのだった。
割れたカップを片付ける男共からナナリーへ目を向けた時に目に入った、ナナリーの真っ白な首筋に残る、いくつかの小さな赤い痣。いつもなら長い髪の毛に隠れているのだろうと思われる場所のそれに、C.C.はスザクのしたたかさをみた気がした。
ぼんやりした顔しておいて、なぁ…
「…ま、がんばれよ、お兄さま。」
にやりと笑いながら話すC.C.に怪訝な、なにかひっかかりを感じながらも、なにも聞かないままにルルーシュはその日は休んだ。


後に叔父さんになったルルーシュが、見事な伯父バカになったとかなんとかはまた別の話。

おしまい。


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29.aug.2009
スザナナと言うよりルルーシュの話になってしまったような…
ルルCでスカちゃんと光流先輩をしたかっただけかもしれん(笑)