『life with flowers』 自販機が見つからなくて結局校舎の方まで行くはめになった。 缶と小さなペットボトルを1つづつもって別れた場所まで戻ると、待っていろと言付けたはずの彼女の姿はなかった。 「ああ、もう!」 のどが渇いたと言い出したのは自分だろう、とロロは心の中で毒づくと、きょろきょろと彼女、妹であるナナリーの姿を探す。 どうせ猫が横切ったとか、綺麗な花が見えたとかとかでふらふらと行ってしまったに違いない。 散歩と称したリハビリもどきに、度々ロロがつきあう様になったのは最近のことだ。 最初の頃は兄のルルーシュがつきあっていたけれど、大学に通う傍らなにやら事業をしているとかでなかなか忙しいようだ。それでも無理矢理にもナナリーの為に時間を裂くのでいろいろと負担がかかる。それなら自分は時間もあるしと、ロロが付き添いを買って出ていた。 散歩のコースは学園の中までというルルーシュの言いつけは守られているが、ここアッシュフォード学園は中等部から大学部まで同じ敷地内にあり、生徒数の割に只只だだっ広い。都心にこんなに土地を所得できたなんてと、創立当時のアッシュフォードの繁栄の程をうかがったものだ。おかげで今は困っているんだけど。 そんな事をつらつら考えていると、懐かしい声がした。 「あーら、ロロちゃんじゃない!久しぶりねぇ。」 「…会長、どうしてここに。」 「もう会長じゃないわよ。ちょっとおじいさまの所に用があってね。〜元気そうでなにより。」 にっこり笑った美しい女性・ミレイは昔とかわらず聡明な様子だ。在学当時は兄が唯一頭が上がらない人だった。 最初はそのぶしつけにも見える態度が、人見知りがちなロロは苦手だった。 「なあに、ひとり?」 「いえ、ナナリーと一緒だったんですけど。」 そうだ。そこまで言って当初の目的を思い出す。 「ナナちゃんがどうかしたの?」 「…飲み物買って来るから待ってるように言ったんですけど、どこか行っちゃって…」 思い出しながらロロが言葉を続けていると、ミレイがぷっと吹き出した。 「…何がおかしいんです?」 「凄い苦い顔してるわよー。ナナちゃんに振り回されてる?」 楽しそうなミレイにロロはため息をついた。 確かにそうかもしれない。 「僕だと不満なのかもしれませんけど。すぐふらふらどこか行こうとするし、すぐ言い合いになるし。」 思い返すとそうだった。 一緒に暮らしだした当初は、ナナリーは本当におとなしい、全てにおいて遠慮がちな、控えめな少女だった。 それが色々あって、打ち解けて。軽口も言うようになるとだいぶ印象が変わってきた。ナナリーの目が開き、足が動くようになってからは更に顕著だ。意外と気が強くて活発だと気付いたのは最近だった。 「嫌われてるのかも、しれませんね。」 本当は。 言葉とともにまたため息が出た。流石にはっきり自覚するとなんだか落ち込んだ。 そんなロロに対して、ミレイはふふんと笑う。 「違うわよ〜甘えてるのね、ロロちゃんに。」 「……誰がですか。」 「ナナちゃんに決まってるでしょ、この流れなら」 人差し指を立てて左右に降りながら言う仕草は、ミレイの癖なのかよく目にしたのを思い出す。不躾なようで、彼女は人の心に敏感で心配りが上手かった。 「甘えてるっていうのは兄さんに対してじゃないんですか。」 「アレはルルちゃんが甘いのよ。ルルちゃんは、ナナちゃんが言う事は大概何でも叶えようとするでしょ? だから逆に遠慮しちゃうのよ。まー普通の兄妹より仲がいいのは確かだけどね。」 確かにナナリーはルルーシュに対しては素直である。わがままもほとんど言わないし、喧嘩なんてしそうにはみえない。 「…ならますます、僕のことが気に入らないんじゃないんですか。」 自分が来る前までは2人だけで作られたいた世界に、不意に入ってきた存在なのは自分だ。 邪魔だと思うならまだしも、甘えてるなんて。考えれば考えるほど、ロロはミレイの言葉の真意がわからない。 「だからー、ロロちゃんだったら安心して喧嘩できる相手ってことよ。」 「…は?」 漏れ出たのは間抜けな一言で。 ミレイはロロの様子に一瞬不満げな顔をしたが、下がり眉で笑顔をうかべる。 「なんだかそういうとこルルちゃんに似てきてない?〜まぁいいか。」 「あの、まったく意味が分からないんですが。」 「ヒントはここまでよ。悩めよ青少年。〜ほら、ナナちゃんが待ってるわよ。ロロちゃんが探してくれるってわかってるからどこか行っちゃうんでしょ、行きなさい。」 「わかりました。引き止めてすみません。…失礼します。」 「じゃぁねぇ〜2人にもよろしく〜」 なんだか割り切れない気分のまま、ロロはミレイに別れを告げた。一度振り返ると、ミレイは笑顔のまままだ手を振っている。 甘えてるとか、安心して喧嘩するとか。ぐるぐる回る言葉達を思い返しても、イマイチよく分からない。 ーとりあえず、嫌われてないのなら、いいんだけど。 そんなことを思いながら、ロロは庭園の方へ向かうことにした。 ロロがナナリーの、そして自分の気持ちに気付くのには、まだしばらく時間がかかるようだ。 おしまい ------------------------------ 26.Oct.2009 結局数時間遅刻orzロロナナ誕生日おめでとう〜(でもナナリーいない…) |